Pick Up!!
山に登る方、登ってみたい方にお読みいただきたい2本。
登山におけるクマ対策
登山はクマの生息地に入っていくレジャーです。 少しでもクマに会った際の被害を軽減するためにまとめました。
登山保険(山岳保険)加入のススメ
登山保険についてまとめました。

Coming Soon!!
◎ 第13回 GISコミュニティフォーラム
 (2017年5月18日13:30 - 17:30)
生物多様性・コンサベーションGISセッション 〜自然環境保全のためのGISデータの有効活用〜



 

大西への連絡はこちらのフォームをご利用下さい。

2017年06月19日

【論文紹介】景観遺伝学と制限要因

2013年8月に東京農工大学で開いた景観遺伝学勉強会で私が担当した論文のレジュメです。

Landscape genetics and limiting factors
Samuel A. Cushman • Andrew J. Shirk •Erin L. Landguth.
Conservation Genetics (2013) 14:263–274

(Research Gateの著者本人のページからダウンロード出来ます)


Introduction
景観遺伝学は個体群の連結性に影響する様々な景観の要素を評価するのに強力なアプローチとなる。
しかし、景観における生息地面積、断片化と非生息地の抵抗性が集団の構造化にどれほど影響するか、そして、これを検出するための統計的手法の検出力はほとんど知られていない。
景観遺伝学的な集団間の関係性の検出は、その景観の中での移動や遺伝子流動を制限する/しない要素に関連している。
例:Short Bull et al. (2011)は、アメリカクロクマで森林、道路や標高などの景観要素の重要性は検出しつつも、遺伝的分化に及ぼす影響に一貫性はなかった。

この実証例は分断化の影響の存在を示しており、特定の地形の特徴に応じた解析が必要視されている。
しかし、そのような実証的研究は観察されたパターンをもたらした要因を明確に特定する能力という点において限定されている。

シミュレーションモデリング→パターン・プロセス関係の明確な制御を提供
測された分化の原因の厳格な帰属を可能にする機能パラメータ、環境特性評価、及び生態属性を変えることによって、シミュレーション・モデリングは異なる景観因子、それらの相互作用、および生物の生活史特性の相対的な影響についての仮説を調べることができる ←実証的研究では不可能



景観遺伝的解析の解釈に重要なポイント
遺伝的構造をもたらす要素:ハビタットの総量、配置、ハビタット間の抵抗性の差異
プロセス:景観パターンがいつ遺伝子流動を制限し始めたのか、いつ遺伝構造が検出されるようになったのか

この論文では、ハビタット面積と分断の程度をコントロールした階層的な景観を作り出す中立な景観モデルを用いて、個体ベースのシミュレーションモデルを行った。

考慮する4つの仮説
@ハビタットが広大なとき景観遺伝学的影響はしばしば検出されない。なぜなら、広大なハビタットのため、移動(遺伝子流動)が制限されることがないため。
Aハビタットが分断されていないとき、景観遺伝的影響はしばしば検出されない。遺伝子流動が制限されないため。
B遺伝的変異に対する景観の影響力と検出力は、ハビタットに対する、ノン・ハビタットの相対的な抵抗力と正の相関がある。
Cpartial マンテルテストで遺伝的構造をもたらす要素の特定ができる

マテメソ
シミュレーションデザイン
ハビタットの広さ、分断化、ハビタット・ノンハビタットの相対的な抵抗性
がどれほどの多様性を持っているかをモデルを使って検証する。
中立的景観モデル QRULE (Gardner 1999) を採用
→Fig.1:256 × 256 pixels in size
P:ハビタットの割合(5段階)、黒:ハビタット、グレー:ノンハビタット
H:ハビタットの凝集度合い(5段階):高いほど凝集している
ノンハビタットの抵抗値:1.5〜16の5段階(ハビタットの抵抗値は1)
各5回の繰り返し→5^4=625


景観マトリクスの選択
・パッチ密度:ハビタットパッチの密度
・correlation length(相関長:GYRATE_AM):重み付けされた平均パッチ半径
個体をランダムにピクセルに置いた時、ランダムな方向に移動する距離
・CLUMPY:ハビタットの凝集度合い
ハビタット量に対して標準化されている。ノン・ランダムに凝集されている度合いを示す。
・Aggregation Index(凝集指数):ハビタットの凝集度合いだが、ハビタット量に対して標準化されていない。
・Patch Cohesion (COHESION):個体が移動することによって検出されるハビタットの連結性の量的評価。面積で重み付けされたパッチ形状の平均指数(the area-weighted mean patch shape index)によって分けられた、面積で重み付けされた周辺長の平均割合(area-weighted mean perimeter-area ratio)に比例している。
全て、FRAGSTATS (McGarigal et al. 2002) で計算した。

景観遺伝学的シミュレーション
CDPOP ver. 0.84 (Landguth and Cushman 2010)を使用。
これは、個体ベースで、空間・景観遺伝的シミュレーションソフトで
出産、死亡、交配、複雑な景観における分散 をシミュレーションする。
625の景観地図に、500個体をランダムに配置して、500世代回す。世代は重ならない。
先行研究から、遺伝構造と景観抵抗性が平衡に達するのに100世代かからない。
二倍体、10遺伝子座×10対立遺伝子、各突然変異率μ=0.0005
交配と分散は距離の二乗に反比例。出産数は平均4頭からポアソン分布。
最大分散距離は抵抗値1に7,680 m(つまり、1ピクセル30m)
625の景観地図で、それぞれ10回(つまり6,250回)

パターン・プロセス関係の検証のためのpartial マンテルテスト
シミュレーション後の500個体の個体間の最小コスト距離をX軸、遺伝的距離をY軸にして、ECODIST package in R (Goslee and Urban 2007)でMantel test をして、相関係数rを計算。

景観マトリクスの要素としてマンテルテストの相関係数(r)の有意差検定
マンテルテストのr値が、景観マトリクスの選択や景観抵抗性に対して、有意な値が検出されるか否かを予測するために、ロジスティック回帰を用いた。

候補になるモデルと、それらの全組み合わせを(ただし、Peason相関係数が0.7を超える組み合わせは除く:Table1)15通りを作り、各抵抗値(R1.5, R2, R4, R8, R16)で15通りのAICを計算。
各抵抗値レベルで以下の7つのパフォーマンスを評価した。
1)Somers’ Dxy の順位相関
X:予測確率 Y:観察値
Dxy=0→ランダムな予測 Dxy=1→完全に予測できる
2)generalized R2 N index of Nagelkerke:
一般的な回帰係数に近いが、ロジスティック回帰により最適化したもの。
3)PCC
Kappa 統計を最適化するcutpointにおける回帰モデルで最適に観察値を識別する割合を計算
4)Sensitivity:モデルの感度を計算。有意な景観遺伝学的な影響が正しく有意として検出される割合。
5)Specificity:モデルの特異性。有意ではない景観遺伝学的な影響が正しく有意ではないとして検出される割合。
6)Kappa statistic:正しく有意・非有意に分類できるか。
7)AUC:計算した範囲が受信者操作特性カーブ(receiver operating characteristic curve)下にあるか

結果
ハビタットの連続性と分断化のマンテルrへの有意性
マンテルテスト:コスト距離 vs 遺伝的距離
Table 2:全6250回の試行のうち、r が有意だった回と有意ではなかった回を抵抗値5段階で分けた。
→抵抗値が大きくなると、有意な回の頻度が増えていく。
特にR1.5→R2の変化が大きい


Table 2改
     抵抗値 有意になる頻度
     R1.5  0.16
     R2   0.31
     R4   0.37
     R8   0.41
     R16   0.40


Table 3:各抵抗値で有意性をサポートした景観変数。
抵抗値が大きくなると、有意性を示す変数は増えていく。
CLUMPY(ハビタットの凝集度合い)はR8以外で有意。


モデルパフォーマンス
Table 4:各モデルの各抵抗値でrが有意となった頻度
抵抗値が高くなるほど、パフォーマンスは上がる。特にR1.5→R2は劇的。

変数の重要性
Table5: 各抵抗値における、有意な景観変数の対数オッズ。
R1.5ではeffectはほとんど無し
R2〜R16ではだいたい一定。
R2〜R8ではcorrelation length(GYRATE_AM)が影響力最大
R16では3変数とも同じ程度


景観構造と抵抗値が景観遺伝的な影響をおよぼす機能の検出
Fig.2:各抵抗値(R2〜R16)で、マンテルテストの回帰係数のプロット。
X:Table3で示した有意な指数の最小
Y: 〃 最大

R2では回帰係数が0.5がプロットエリアの真ん中辺りなのに対し、抵抗値が上がるにつれ回帰係数が高まっていくのがわかる。


考察
結果のまとめ
@複雑な景観配置が遺伝的構造に有意に影響しているかどうかを予測できる感度は、ハビタット間の移動経路(ノンハビタット)の抵抗の度合いに大いに関係している。抵抗・小→感度・低

Aハビタットの分断が進んでいるとき、遺伝的分化は地理的距離には独立で、景観構造にのみ有意に依存している。

B遺伝的分化に影響する景観的抵抗性を特定することは難しい
シミュレーションでは地理的距離から独立した遺伝子流動の景観的な影響を特定することは出来なかった。理由:いくつかの連結性のあるパッチ毎に凝集している傾向が有るため。
たとえ、その種が分散や移動に特定の景観構造や植生に依存しているとしてもだ。

Jaquie´ry et al. (2011) :景観構造の複雑さが増すことで、遺伝子流動の減少の景観的要因を特定できる。
特定の相互関係や凝集度合いにおける検出力と正確性を、いくつかの要素からなる景観の中に49の個体群を生成したシミュレーションで比較した。
Jaquie´ryらの景観的抵抗性マップはその構成(要素の数も含む)とセルサイズは空間的にランダムで多様であるが、そのパターンはランダムではない。
従って、異なる抵抗性を持つパッチタイプの数に関連しており、空間的パターンには関連していない。
今回の結果は、遺伝的分化を引き起こす景観的抵抗性の影響を特定する能力は、空間的な複雑性(および分断化)が増すほどに上昇し、また、抵抗性の程度とも関係する、ということである。


実証研究の事例
・アメリカクロクマ(Cushman and Landguth2010)
個体ベースのcausal モデリングによるパーシャルマンテルテストは、景観抵抗の検出力が非常に強く、一方でIBD・IBBの却下力も強い
→しかし、この研究は(大きな川や谷で)細分化の程度が強い景観で行われていて、最適なハビタットとノンハビタットの抵抗性の差が大きい(63倍)。

・アメリカクロクマ(Short Bull et al. 2011)
ロッキー山脈内の12のサイト
標高、森林、道路などの景観の異質性が高いときに、景観抵抗性が地理的距離に比べて強く影響している。しかし、均一で連続的な景観においては、距離および抵抗による隔離の効果も同様に支持され、分離できないとした。

・アメリカテン
カナダのユーコン州とノースウェストテリトリーズ州(Kyle et al. 2000)、オンタリオ州(Broquet et al. 2006; Koen et al. 2012)、カナダの広域にわたる範囲(Kyle and Strobeck 2003)
IBDの機能にのみ弱い差異が見られている。
島間の遺伝子流動が制限されている群島地域(e.g. Small et al. 2003)や、複雑な地形からなる山系(e.g. Wasserman et al. 2010, Wasserman et al. 2012a, b)では大きな遺伝構造が検出されている。
前者の著者らは、大きな有効集団サイズ、均一なハビタットを通じた頻度の高い遺伝子流動、ハビタットの分断化に対する種特異的な感度の低さ、の複合的な要因によると論じている。
しかし、著者は本研究のシミュレーションから、前者でIBDしか検出されないのは、寒冷なカナダのような単純な環境によるものだ、としている。一方、後者の複雑な地形や高い分断化によって強い抵抗性の違いがある環境では、距離から独立した影響を検出できることもシミュレーション結果と矛盾しない。

行動生態学的に考える
動物は確実な資源にアクセスしつつ、被食のリスクを最小にするように最適化することで、適応度を最大にするように行動している。
単一で連続的な景観
  異なる経路の選択を加速させる異質性はほとんど無く
   → 移動はランダムウォークになる
   → IBDパターンとなって、抵抗性による隔離は導かれない。
複雑な景観、分断化が進んだ景観
 移動経路は不適な環境を避けるようにして選ばれるようになる。
   = 採餌効率を最大化するための最適な経路を選ぶ
   → 抵抗性による隔離の効果が強くなる。
最後に
中立な景観モデルと一般化された個体群モデルを結合することは、個体群モデルにおける複雑な空間的パターンの結合や、景観構造の種による認識の特定、景観の連結性の決定、ハビタットの分断化が個体群の細分化にもたらす帰結の評価、絶滅の予測、などを可能にする。

posted by bigwest at 16:16| Comment(0) | 雑文(研究関係)

2017年02月17日

【論文紹介】空間的遺伝的分化における生態学的・地理学的影響の評価

2014年5月に東大で開いた景観遺伝学勉強会で私が担当した論文のレジュメです。


Quantifying the roles of ecology and geography in spatial genetic divergence
Wang,I.J., Glor,R.E. & Losos,J.B. (2013)
Ecological Letter 16: 175-182 doi: 10.1111/ele.12025

距離が離れていたら環境も異なることが多いため、IBDとIBE (Isolation-by -Environment)の貢献度を切り分けることは本質的に難しい
→IBDとIBEの貢献度を定量化する新しいSEM(Structural Equation Model:構造方程式モデル)

マテメソ
・Anolis属のトカゲ4島、17種。mtDNA上のいくつかの領域。3種はnDNAも。【Fig.1】
・2つを地理的距離とした →Resultsより:2つのコスト距離は強く相関していた(r2 > 0.65)。
  1.最小コスト距離 2.Circuit距離:2地点間の可能パスのコストの総和。
・環境変数は気象(11)、地形(8)、植生(4)、標高の24種類。

SEM:構造方程式モデル
・SEM:回帰分析やパス解析を下位モデルとして含む、第2世代の多変量解析モデル。
複数の変数同士の複雑な関係性を評価できる。
→地理的距離や環境変数などの大量の異なる変数の遺伝的距離への貢献度を評価できる。
他の変数から推定するような直接測定できない潜在的な変数も使える。
→地理的距離も環境変数も潜在的な変数として扱う。

【Fig.2】SEMにおけるパス図:□ 計測値、○ 潜在的な変数
地理的距離と環境類似度は標準化して共分散を計算
 →RのLavaanパッケージのmaximum –likelihood estimation (MLE)で計算
各パラメータはシミュレーションで推定 →AICでベストモデルを探す

手法の検証
・GDM(Generalized Dissimilarity Modeling)とvariation partitioning analysisで検証。
この2種は潜在的な変数を用いることができないので、予測変数をPCAで先に選択する。

結果
構造方程式モデル
・【Tab.1, Fig.3】17種中15種でIBDが有意に貢献しており、13種でIBEが有意に貢献していた。
11種で、IBE+IBDのモデルが、どちらか一方のモデルよりもAICは適したスコアを示した。
平均してIBDが36.3%、IBEが17.9%の説明力をもっていた。
Cuba・Puerto Rico:IBD>IBE、 Hipaniola:IBD手法の検証
・全体的にGDMもvariation partitioning analysisもSEMの結果を支持。
【Tab.2】nDNAとmtDNAの比較。
A.porcatus:nDNAとmtDNAそれぞれ単独で行っても結果は類似。
他の2種:nDNAは単独で解析できるほどの変異が無く、mtDNA単独とmtDNA+nDNAを比較してもほとんど違いは無かった。

考察
構造方程式モデル
・SEMによってIBDはIBEの約2倍の影響力があることがわかった。
・Hispaniolan:5種中4種でIBE > IBD。IBEの貢献度が最も高い(5種平均22.6%)
←環境の不均一性:大
・他3島間:環境類似度に違いは無し。各島のサンプリングサイトごとの環境変数でも有意な違いは無い
→IBEの貢献度が低くなった。

手法の検証
・検証に2手法でSEMの結果を支持。nDNAを含んでも支持 → SEMの頑健性
posted by bigwest at 16:36| Comment(0) | 雑文(研究関係)

2015年05月08日

登山におけるクマ対策


(東北を中心に書いていますが、内容は全国共通です。ヒグマが生息している北海道は特に深刻な内容です)

山登りに関する情報交換の際に、「あの辺りはよくクマが出るから気をつけて」というような声を耳にします。

しかし、私が声を大にして言いたいのは、クマなんてどこにでもいます
特に、私が今住んでいる岩手県を始めとする東北地方の山はどこにでも高密度にいます。

そもそも登山とはクマの生息地に入っていくレジャー(スポーツ)であり、クマと遭遇するリスクを最初から考慮に入れるべきです

「あの辺りはクマが出る」というのは、おそらく「人慣れしていたり警戒心の薄い個体が目撃される」という意味であり、むしろそういった個体は襲ってくる可能性が他の個体に比べて低いかもしれません(確信は持てませんが)。

AkikomaBear.jpg
クマがよく出ると言われる秋田駒ヶ岳のお鉢付近で見つけたツキノワグマ。
こちらがどんなに騒いでも、のんびりとお昼寝してました。


10277673_4132113999071_6050175966221735348_n.jpg
こちらは北上山地の某所。数日前から新聞等で目撃情報が報道されていましたが、私たちが近づいても常に一定距離を保ちつつ食べ歩きをしていました。



クマに襲われるのは「突然出くわした」というケースがほとんどであり、その際にクマ側が自分自身を守るために襲ってくるのです。
その点から考えると、「あの辺りはクマが出る」という情報が指している個体はむしろ襲ってくる可能性は低く、他の個体・他の地域こそ警戒する必要がありそうです。
(もちろん「あの辺りはクマが出る」という地域でも複数個体が生息しているので、やはり警戒は必要です)。

登山におけるクマ対策は「襲われた時にどうするか」ではなく「出くわさない」のが鉄則ですが、今回の記事ではあえて襲われた場合の状況を書きます。

クマに関する専門家や関心の高い一般市民で構成される「日本クマネットワーク」が2011年にクマと遭遇した際の被害状況をまとめています。

「人身事故情報のとりまとめに関する報告書」
http://www.japanbear.sakura.ne.jp/cms/2011/05/post_40.html

クマによる被害はここの18〜20ページにまとまっています。

ヒグマは北海道、ツキノワグマは本州、四国に生息していて、九州ではすでに絶滅しています。


【ヒグマ:ほぼ重傷か死亡。ツキノワグマ:約半数が重傷】
図1-19(18ページ)によると、
ヒグマが生息している北海道では、半数近くが死亡、4割程度が重傷です(不明を除いて考えています)。
繰り返します。ヒグマに襲われた場合、ほとんどが重傷か死亡です。

ツキノワグマに襲われた場合は、半数近くが重傷で、死亡は5%程度です(不明を除いて考えています)。

ヒグマに襲われて死亡した場合(ツキノワグマでもありえますが)、多くのケースで自分の死体がクマに食べられると思って下さい。
北米でのヒグマの被害(北海道のヒグマと同種です)をまとめた、「ベア・アタックス―クマはなぜ人を襲うか」では、被害者がまだ生きているにも関わらず太ももを食べられた例などが紹介されています(その後救助され、片足切断したものの命は助かりました)。

【とにかく頭部を守る】
攻撃される場所は地域を問わず顔と頭部で約4割を占めます(20ページ、図1-22:不明を除いて考えています)。
次いで、腕・脚です。報告書によると

「北米のグリズリーどうしが出合って攻撃し合うときは,お互いの顔や頭に攻撃を加えて相手が攻撃できなくすると考えられている(ヘレロ 2000).これと同じやり方で,人に対しても顔の付近を狙った攻撃を加えたものと考えられた.クマによる攻撃への対処は,その場面によって様々な方法が考えられるが,もしも積極的な反撃よりも防御を選択すべきようなときには,俯せになって両腕で顔と頭の両側(および頸部)を保護する姿勢(ヘレロ 2000)は非常に有効であると考えられる.また,ヘルメットなど頭部を保護できるものを着用することも有効であろう.」

「腕と脚も被害が多く発生している部位である.腕への被害は,クマの襲撃から身を守ろうとして被害を受けた場合に,また,脚や背部への被害は,襲撃から逃れようとして背後から受けた被害であることが推測される.食肉類の多くがそうであるように,クマは逃げるものなら何でも追いかけると考えられている(ヘレロ 2000).クマと遭遇したときに,背を向けて逃げることは避けるべきである.」


としています。ちなみに、ヘレロ 2000 は先述のベア・アタックスです。



攻撃スタイルは噛むのとひっかく(叩く)が多いようです(19ページ、図1-21:不明を除いて考えています)。
また、噛むのはどこでも噛めるところを噛むけど、ひっかくのは顔と頭が多いようです(49ページ、図2-2-29)。

顔の場合は目を失う例をよく聞きます。 失明ではなく、目玉を持ってかれます(目玉が外に飛び出します) 。
頭は頭から首にかけて皮膚が剥かれたり、頭蓋骨が見えたりする例を聞きます。



いかがでしょうか?

この記事を読んで、少しでも「怖い」と思った方は、素直に今すぐクマ撃退スプレーとヘルメットを買いましょう!!

クマスプレーは1万円前後するために購入をためらってしまいますが、グループ全員が持つ必要はありません。また、友人同士で貸し借りしても良いでしょう。
私もよく友人に貸しますが、「もし使ったら新しく買って返して」と言っています。

しかし、当然ながらクマスプレーは持っているだけでは意味はありません。
クマに遭遇した際に、クマスプレーをザックに入れていて取り出せずに襲われてしまった例もあります。
私はいつもショルダーベルトかウエストベルトに付けています。
そして、登山開始後、できるだけ早いタイミングで歩きながらスプレーを見ないで外し、安全トリガーを見ないで外すところまで数回練習します。
もしクマに遭遇した際に落ち着いて対応できるためのイメージトレーニングです。

また、クマスプレーはイノシシ、サル、野犬などに襲われた際にも有効です。


ヘルメットは昨年の御嶽山の噴火でその必要性が再認識されたでしょう。
また、今年、林内で作業中にヒグマに襲われた方のヘルメットには爪で穴が開いていたとのことです。
幸い一命をとりとめましたが、ヘルメットを着用していなければ死亡していた可能性が極めて高いでしょう。


鉈(ナタ)などをクマ対策として携行する人もいますが、私はお薦めできません。
ツキノワグマの体格は成人男性と同じ程度なので勝てる気がするかも知れませんが、やはり野生動物です。筋肉量、スピードが我々とは格段に違います。また、彼らの爪は立派な凶器です。

もしあなたが格闘技や武道の経験があったとしても、初めて対峙する、どう動くか、どんなスピードで動くかもわからない相手の攻撃をかわして急所を一発で斬れる自信はありますか?

鉈で追い払いに成功した例は実際にありますが、ほぼまぐれと言って良いでしょう。
急所を外した場合、逆上してさらに執拗に攻撃してくる場合もあるでしょう。
さらに、深手を負ったクマが(人間に恨みを持ってか)数時間〜数日後に関係のない他の人を襲った例が数多くあることも添えておきます。


万が一、クマに襲われ際は(出くわした、ではなく、襲われた、です)、手で首をガードして地面に伏せてください。脚もたたんで亀状になるのが良いでしょう。背中はザックが、頭はヘルメットが守ってくれます。倒木などがあれば、可能な限り体をそこにくっつけます。
とにかく、露出している箇所を減らすのが肝心です。


クマ対策は「出会ったらどうするか、ではなく、出会わない対策を」というのが鉄則です。
ですが、今回一番伝えたいこと(クマスプレーの携行とヘルメットの着用)の印象が薄れてしまうので、今回は出会わない対策はあえて書きません。


追記:この記事で紹介しているクマネットワークの報告書は、人里に出没したクマや作業中の事故を主体としているので、出没傾向や対策などは人里へのものであり、我々がクマの生息地に踏み込んでいく登山とは別の物だと思って下さい。

追記2:登山保険についても書いているのでご一読ください。


posted by bigwest at 00:00| Comment(0) | 雑文(研究関係)