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2011年03月01日

うなドン

うなドン
青山 潤
講談社


今年2月上旬、大コーフンするニュースが舞い込んできました。

ニホンウナギの卵が見つかったのです!
あの東大海洋県の塚本教授チームがついにやりました!

私はただの塚本チームのファンで、本人の講演を聞いたことすらないのですが、その日は1日中興奮していました。

さて、この本は、塚本チームの自称“大番頭”こと青山潤さんの第2作目。

処女作「アフリカにょろり旅」は、青山さんが博士課程時代に18種類目のウナギを求めアフリカをさまよう珍道中を記したエッセイですが、本作は本人曰く「純真な青年が悪くなっていく過程(2月20日 毎日新聞)」です。

本作は3部構成からなっています。
第一部は、本人がウナギ研究の舞台に舞い込んでしまう経緯
第二部は、研究者としての礎を気づいたタヒチでのサンプリング旅行
そして、第三部は現在の彼が目指しているところ

第一部は、アフリカにょろり旅を上回る抱腹絶倒の物語。
バリバリの研究者として世界を相手に戦っているサイエンティストとは思えない、その文章力。
一人部屋の中で笑い転げました。

第二部は、科学という世界に数年身を置いて、その将来に不安を感じつつも、純粋にサイエンスを楽しむ姿。

第三部は今後の展開を期待させる今の彼が考えていること。

どれも非常に読み応えがあります。

我々、scientistはライバルは世界中にいて、常に自分の“武器”を探しています。
一流の研究者はいざしらず、私のような三流は、世界と戦える武器は1つか2つしかありません。

『頭が悪いというならば、人より努力するしかない。それでも追いつかないならば、「高いところ」へ走って、そこから跳び上がるしかないのだ。ほんのわずかでもいいから、誰よりも高く跳び上がるために……』

と著者は第一部で述べている。
私が学生時代、周りでよく言っていた言葉は
『頭が無い分、サンプル数で勝負だ』である。
また、我々は自分たちを『パワーエコロジスト』と呼んでいた。

最近では、世間のニーズを読んで、小さな論文をコンスタントに書けるようになってしまった。
しかし、それは今までの武器のストックを小出しにしているようなもので、武器を磨くことはおろそかになっていないか?

時々は立ち止まって、黙々と武器を磨いていた時を思い出す必要がありますね。


第二部では、著者は自分たちを「うなぎのドン・キホーテ。略してうなドン」と呼んでいる。
そして、昔の博物学と、今現在我々が置かれた状況を比較して、

『大きな鉞を担いで森へ分け入り、気を切り倒し、枝を払って人里へ下ろすのが博物学者なら、それを製材し、鋭利な刃を使って凄惨な彫刻を施すのが、現代の科学者と例えることができるかもしれない。そして、現在は、工房に籠もり、美しい彫刻を彫り出すことに腐心する時代なのである』

と表現する。
しかし、
『たとえ研究室(工房)の中であっても、誰も知らない事実、すなわち、美しい作品をものにできた瞬間というのはワクワクするモノだ。あの脳みそがグワングワンと揺さぶられるような感覚こそ、近代科学の感動なのかもしれない。』
と続く。

一昨年発表したHeredityの論文のデータを解析しているときは、まさに「脳みそがグワングワン」していた。
やっぱり、われわれはその“快楽”を求めて研究しているのでしょうね。

著者の青山さんとは面識は無いのですが、彼の文章に惹きつけられる理由として、その文章力はもちろんのこと、科学者として共感する部分が多いからということが、この本で気づきました。

私自身がぼんやりと考えていたり、上手く言葉に表せない部分を
「なるほど!なんて的確に表現してくれるのだろう」
と感心してしまいます。


さて、第二部のもう一つの読み応えポイントは、著者と塚本教授の信頼関係です。
基本的に放任主義のようですが、その実しっかりと学生の将来を考えてくれている。
でも、興味のあることに嬉々として邁進する姿は根っからのscientist.

著者自身もつかず離れずの適度な距離を保ちながらも、人柄にまで惚れ込んでしまっている。

教官と学生がこれほどの信頼関係で結ばれているチームは、それは良い結果を出せるに決まってますよね。

私も師匠と恩師には恵まれましたが、この二人の関係にもあこがれますし、ますますファンになってしまう、そんな本でした。
posted by bigwest at 23:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(Science関係)

2007年04月25日

理系白書 この国を静かに支える人たち

理系白書 この国を静かに支える人たち
毎日新聞社科学環境部
講談社

毎日新聞夕刊で連載されている理系白書をまとめたもの.


「理系人への応援歌」とされているけど,まさにその通りである.

科学立国と呼ばれているこの国の実状は,実は文系立国であることが如実にわかる.

研究所に勤める身としては,周りはそれこそ理系人ばかりなので気づかなかったが
一般社会では理系と文系との間に,出世・生涯賃金などにおいてかなりの格差があることを知った.

今までの生活の中で,理系は肩身が狭いことをなんとなく感じていたが
データとして出されると,その差に驚いてしまう.
(データをみるまで実感しないのが,まさに理系人?)

別に生涯賃金が低いことを嘆いているのではない.
なぜ,これほどまでに日本では理系の肩身が狭いのか...

そもそも,子供の時は自然科学に興味をもつ人の比率は高いのではないのだろうか.
しかし,現状の詰め込み型の受験社会の中では,その興味を捨てざるを得ない状況になっている.

そして,文系が社会の決定権を握るようになり,あらゆるシステムが文系中心に作られていく.

悪循環である.

生涯賃金は理系の方が少ないのに対して,仕事に対するやりがいや充実感は
理系の方が感じているというデータもある.

大学の時,私自身体育会系の部活をしていたのだが,体育会系の部員の8割方は理系学部だった.
朝1時限目から夜までびっしり講義・実習があり,バイトもし,部活もする.
この違いはなんなんだろう,とよく友人と話していた.

結局,教育システムの中で興味や夢を捨てなかった人,苦労することを苦に思わない人が
文系科目を選ばずに理系に留まってきたのではないだろうか.

いや,もちろん,そんな単純化できる話ではないが...

いずれにせよ,理系の人がこの本を読んでも
 「そうそう,そうだよね」

って思うだけで,あまり意味がない?

文系の人にこそ読んでもらいたい.
理系的(つまり論理的,自然科学的)発想の重要性は社会を形成していく上で必要なはずだ.


【読書期間 2007.4.19〜23 約4時間  読書場所:移動中】
posted by bigwest at 00:00| 書評(Science関係)

2007年04月20日

熱帯雨林を観る

熱帯雨林を観る
百瀬 邦泰
講談社


私の周りにはマレーシアやインドネシアの熱帯雨林をフィールドにする植物生態学者が多くいるが
自分の専門とは離れているため,一斉開花,高い生物多様性くらいはある程度の知識はあっても話についていけないことが多かった.

つまり,何が面白いのかよくわかっていなかった,のである.

本書はその「何が面白いのか」を教えてくれる本であると思う.

熱帯雨林の本として,一斉開花からトピックを始めるのは常套手段だろうが
その後,熱帯雨林のタイプの違いによる個々の樹木が採る繁殖戦略の違いや
多様性が作り出される理由,ポリネーターとの関係など,様々なモデルを
わかりやすく説明しつつ,本人の見解も展開していく.

ということで,多分 この本は実際に植物生態学を専門とする人よりも
私のような生態学分野の中でも別のジャンルを専門としている人向けなのではないだろうか.

個人的には「住民にとっての熱帯雨林」の章が最も面白かった.
現地の人たちがどのように森を見て,利用して,そして,畏れているか.
日本でもその地域ごとに森の利用形態が異なり,それに伴って動植物の名前や
伝説・妖怪などが変わってくるように,熱帯地域でも同様の現象があるということだ.

また,「この点が彼のえらいところである」という感じで時々出てくる筆者の「つっこみ」も楽しい.

【読書期間 2007.4.18〜19 約4時間  読書場所:移動中,喫茶店】
posted by bigwest at 00:00| 書評(Science関係)