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2017年09月07日

【編集長イチオシ論文】に選ばれました!

Ecological Researchで発表されたアマミノクロウサギの論文が【編集長イチオシ論文】に選ばれました。

10年以上前にサンプリングしたまま塩漬けになっていた内容で、気恥ずかしい限りですが...

論文の要旨はこちらにあります。
また、日本語解説文はクロウサギ解説.pdfです。


posted by bigwest at 00:00| Comment(0) | 雑文(研究関係)

2017年06月19日

【論文紹介】景観遺伝学と制限要因

2013年8月に東京農工大学で開いた景観遺伝学勉強会で私が担当した論文のレジュメです。

Landscape genetics and limiting factors
Samuel A. Cushman • Andrew J. Shirk •Erin L. Landguth.
Conservation Genetics (2013) 14:263–274

(Research Gateの著者本人のページからダウンロード出来ます)


Introduction
景観遺伝学は個体群の連結性に影響する様々な景観の要素を評価するのに強力なアプローチとなる。
しかし、景観における生息地面積、断片化と非生息地の抵抗性が集団の構造化にどれほど影響するか、そして、これを検出するための統計的手法の検出力はほとんど知られていない。
景観遺伝学的な集団間の関係性の検出は、その景観の中での移動や遺伝子流動を制限する/しない要素に関連している。
例:Short Bull et al. (2011)は、アメリカクロクマで森林、道路や標高などの景観要素の重要性は検出しつつも、遺伝的分化に及ぼす影響に一貫性はなかった。

この実証例は分断化の影響の存在を示しており、特定の地形の特徴に応じた解析が必要視されている。
しかし、そのような実証的研究は観察されたパターンをもたらした要因を明確に特定する能力という点において限定されている。

シミュレーションモデリング→パターン・プロセス関係の明確な制御を提供
測された分化の原因の厳格な帰属を可能にする機能パラメータ、環境特性評価、及び生態属性を変えることによって、シミュレーション・モデリングは異なる景観因子、それらの相互作用、および生物の生活史特性の相対的な影響についての仮説を調べることができる ←実証的研究では不可能



景観遺伝的解析の解釈に重要なポイント
遺伝的構造をもたらす要素:ハビタットの総量、配置、ハビタット間の抵抗性の差異
プロセス:景観パターンがいつ遺伝子流動を制限し始めたのか、いつ遺伝構造が検出されるようになったのか

この論文では、ハビタット面積と分断の程度をコントロールした階層的な景観を作り出す中立な景観モデルを用いて、個体ベースのシミュレーションモデルを行った。

考慮する4つの仮説
@ハビタットが広大なとき景観遺伝学的影響はしばしば検出されない。なぜなら、広大なハビタットのため、移動(遺伝子流動)が制限されることがないため。
Aハビタットが分断されていないとき、景観遺伝的影響はしばしば検出されない。遺伝子流動が制限されないため。
B遺伝的変異に対する景観の影響力と検出力は、ハビタットに対する、ノン・ハビタットの相対的な抵抗力と正の相関がある。
Cpartial マンテルテストで遺伝的構造をもたらす要素の特定ができる

マテメソ
シミュレーションデザイン
ハビタットの広さ、分断化、ハビタット・ノンハビタットの相対的な抵抗性
がどれほどの多様性を持っているかをモデルを使って検証する。
中立的景観モデル QRULE (Gardner 1999) を採用
→Fig.1:256 × 256 pixels in size
P:ハビタットの割合(5段階)、黒:ハビタット、グレー:ノンハビタット
H:ハビタットの凝集度合い(5段階):高いほど凝集している
ノンハビタットの抵抗値:1.5〜16の5段階(ハビタットの抵抗値は1)
各5回の繰り返し→5^4=625


景観マトリクスの選択
・パッチ密度:ハビタットパッチの密度
・correlation length(相関長:GYRATE_AM):重み付けされた平均パッチ半径
個体をランダムにピクセルに置いた時、ランダムな方向に移動する距離
・CLUMPY:ハビタットの凝集度合い
ハビタット量に対して標準化されている。ノン・ランダムに凝集されている度合いを示す。
・Aggregation Index(凝集指数):ハビタットの凝集度合いだが、ハビタット量に対して標準化されていない。
・Patch Cohesion (COHESION):個体が移動することによって検出されるハビタットの連結性の量的評価。面積で重み付けされたパッチ形状の平均指数(the area-weighted mean patch shape index)によって分けられた、面積で重み付けされた周辺長の平均割合(area-weighted mean perimeter-area ratio)に比例している。
全て、FRAGSTATS (McGarigal et al. 2002) で計算した。

景観遺伝学的シミュレーション
CDPOP ver. 0.84 (Landguth and Cushman 2010)を使用。
これは、個体ベースで、空間・景観遺伝的シミュレーションソフトで
出産、死亡、交配、複雑な景観における分散 をシミュレーションする。
625の景観地図に、500個体をランダムに配置して、500世代回す。世代は重ならない。
先行研究から、遺伝構造と景観抵抗性が平衡に達するのに100世代かからない。
二倍体、10遺伝子座×10対立遺伝子、各突然変異率μ=0.0005
交配と分散は距離の二乗に反比例。出産数は平均4頭からポアソン分布。
最大分散距離は抵抗値1に7,680 m(つまり、1ピクセル30m)
625の景観地図で、それぞれ10回(つまり6,250回)

パターン・プロセス関係の検証のためのpartial マンテルテスト
シミュレーション後の500個体の個体間の最小コスト距離をX軸、遺伝的距離をY軸にして、ECODIST package in R (Goslee and Urban 2007)でMantel test をして、相関係数rを計算。

景観マトリクスの要素としてマンテルテストの相関係数(r)の有意差検定
マンテルテストのr値が、景観マトリクスの選択や景観抵抗性に対して、有意な値が検出されるか否かを予測するために、ロジスティック回帰を用いた。

候補になるモデルと、それらの全組み合わせを(ただし、Peason相関係数が0.7を超える組み合わせは除く:Table1)15通りを作り、各抵抗値(R1.5, R2, R4, R8, R16)で15通りのAICを計算。
各抵抗値レベルで以下の7つのパフォーマンスを評価した。
1)Somers’ Dxy の順位相関
X:予測確率 Y:観察値
Dxy=0→ランダムな予測 Dxy=1→完全に予測できる
2)generalized R2 N index of Nagelkerke:
一般的な回帰係数に近いが、ロジスティック回帰により最適化したもの。
3)PCC
Kappa 統計を最適化するcutpointにおける回帰モデルで最適に観察値を識別する割合を計算
4)Sensitivity:モデルの感度を計算。有意な景観遺伝学的な影響が正しく有意として検出される割合。
5)Specificity:モデルの特異性。有意ではない景観遺伝学的な影響が正しく有意ではないとして検出される割合。
6)Kappa statistic:正しく有意・非有意に分類できるか。
7)AUC:計算した範囲が受信者操作特性カーブ(receiver operating characteristic curve)下にあるか

結果
ハビタットの連続性と分断化のマンテルrへの有意性
マンテルテスト:コスト距離 vs 遺伝的距離
Table 2:全6250回の試行のうち、r が有意だった回と有意ではなかった回を抵抗値5段階で分けた。
→抵抗値が大きくなると、有意な回の頻度が増えていく。
特にR1.5→R2の変化が大きい


Table 2改
     抵抗値 有意になる頻度
     R1.5  0.16
     R2   0.31
     R4   0.37
     R8   0.41
     R16   0.40


Table 3:各抵抗値で有意性をサポートした景観変数。
抵抗値が大きくなると、有意性を示す変数は増えていく。
CLUMPY(ハビタットの凝集度合い)はR8以外で有意。


モデルパフォーマンス
Table 4:各モデルの各抵抗値でrが有意となった頻度
抵抗値が高くなるほど、パフォーマンスは上がる。特にR1.5→R2は劇的。

変数の重要性
Table5: 各抵抗値における、有意な景観変数の対数オッズ。
R1.5ではeffectはほとんど無し
R2〜R16ではだいたい一定。
R2〜R8ではcorrelation length(GYRATE_AM)が影響力最大
R16では3変数とも同じ程度


景観構造と抵抗値が景観遺伝的な影響をおよぼす機能の検出
Fig.2:各抵抗値(R2〜R16)で、マンテルテストの回帰係数のプロット。
X:Table3で示した有意な指数の最小
Y: 〃 最大

R2では回帰係数が0.5がプロットエリアの真ん中辺りなのに対し、抵抗値が上がるにつれ回帰係数が高まっていくのがわかる。


考察
結果のまとめ
@複雑な景観配置が遺伝的構造に有意に影響しているかどうかを予測できる感度は、ハビタット間の移動経路(ノンハビタット)の抵抗の度合いに大いに関係している。抵抗・小→感度・低

Aハビタットの分断が進んでいるとき、遺伝的分化は地理的距離には独立で、景観構造にのみ有意に依存している。

B遺伝的分化に影響する景観的抵抗性を特定することは難しい
シミュレーションでは地理的距離から独立した遺伝子流動の景観的な影響を特定することは出来なかった。理由:いくつかの連結性のあるパッチ毎に凝集している傾向が有るため。
たとえ、その種が分散や移動に特定の景観構造や植生に依存しているとしてもだ。

Jaquie´ry et al. (2011) :景観構造の複雑さが増すことで、遺伝子流動の減少の景観的要因を特定できる。
特定の相互関係や凝集度合いにおける検出力と正確性を、いくつかの要素からなる景観の中に49の個体群を生成したシミュレーションで比較した。
Jaquie´ryらの景観的抵抗性マップはその構成(要素の数も含む)とセルサイズは空間的にランダムで多様であるが、そのパターンはランダムではない。
従って、異なる抵抗性を持つパッチタイプの数に関連しており、空間的パターンには関連していない。
今回の結果は、遺伝的分化を引き起こす景観的抵抗性の影響を特定する能力は、空間的な複雑性(および分断化)が増すほどに上昇し、また、抵抗性の程度とも関係する、ということである。


実証研究の事例
・アメリカクロクマ(Cushman and Landguth2010)
個体ベースのcausal モデリングによるパーシャルマンテルテストは、景観抵抗の検出力が非常に強く、一方でIBD・IBBの却下力も強い
→しかし、この研究は(大きな川や谷で)細分化の程度が強い景観で行われていて、最適なハビタットとノンハビタットの抵抗性の差が大きい(63倍)。

・アメリカクロクマ(Short Bull et al. 2011)
ロッキー山脈内の12のサイト
標高、森林、道路などの景観の異質性が高いときに、景観抵抗性が地理的距離に比べて強く影響している。しかし、均一で連続的な景観においては、距離および抵抗による隔離の効果も同様に支持され、分離できないとした。

・アメリカテン
カナダのユーコン州とノースウェストテリトリーズ州(Kyle et al. 2000)、オンタリオ州(Broquet et al. 2006; Koen et al. 2012)、カナダの広域にわたる範囲(Kyle and Strobeck 2003)
IBDの機能にのみ弱い差異が見られている。
島間の遺伝子流動が制限されている群島地域(e.g. Small et al. 2003)や、複雑な地形からなる山系(e.g. Wasserman et al. 2010, Wasserman et al. 2012a, b)では大きな遺伝構造が検出されている。
前者の著者らは、大きな有効集団サイズ、均一なハビタットを通じた頻度の高い遺伝子流動、ハビタットの分断化に対する種特異的な感度の低さ、の複合的な要因によると論じている。
しかし、著者は本研究のシミュレーションから、前者でIBDしか検出されないのは、寒冷なカナダのような単純な環境によるものだ、としている。一方、後者の複雑な地形や高い分断化によって強い抵抗性の違いがある環境では、距離から独立した影響を検出できることもシミュレーション結果と矛盾しない。

行動生態学的に考える
動物は確実な資源にアクセスしつつ、被食のリスクを最小にするように最適化することで、適応度を最大にするように行動している。
単一で連続的な景観
  異なる経路の選択を加速させる異質性はほとんど無く
   → 移動はランダムウォークになる
   → IBDパターンとなって、抵抗性による隔離は導かれない。
複雑な景観、分断化が進んだ景観
 移動経路は不適な環境を避けるようにして選ばれるようになる。
   = 採餌効率を最大化するための最適な経路を選ぶ
   → 抵抗性による隔離の効果が強くなる。
最後に
中立な景観モデルと一般化された個体群モデルを結合することは、個体群モデルにおける複雑な空間的パターンの結合や、景観構造の種による認識の特定、景観の連結性の決定、ハビタットの分断化が個体群の細分化にもたらす帰結の評価、絶滅の予測、などを可能にする。

posted by bigwest at 16:16| Comment(0) | 雑文(研究関係)

2017年02月17日

【論文紹介】空間的遺伝的分化における生態学的・地理学的影響の評価

2014年5月に東大で開いた景観遺伝学勉強会で私が担当した論文のレジュメです。


Quantifying the roles of ecology and geography in spatial genetic divergence
Wang,I.J., Glor,R.E. & Losos,J.B. (2013)
Ecological Letter 16: 175-182 doi: 10.1111/ele.12025

距離が離れていたら環境も異なることが多いため、IBDとIBE (Isolation-by -Environment)の貢献度を切り分けることは本質的に難しい
→IBDとIBEの貢献度を定量化する新しいSEM(Structural Equation Model:構造方程式モデル)

マテメソ
・Anolis属のトカゲ4島、17種。mtDNA上のいくつかの領域。3種はnDNAも。【Fig.1】
・2つを地理的距離とした →Resultsより:2つのコスト距離は強く相関していた(r2 > 0.65)。
  1.最小コスト距離 2.Circuit距離:2地点間の可能パスのコストの総和。
・環境変数は気象(11)、地形(8)、植生(4)、標高の24種類。

SEM:構造方程式モデル
・SEM:回帰分析やパス解析を下位モデルとして含む、第2世代の多変量解析モデル。
複数の変数同士の複雑な関係性を評価できる。
→地理的距離や環境変数などの大量の異なる変数の遺伝的距離への貢献度を評価できる。
他の変数から推定するような直接測定できない潜在的な変数も使える。
→地理的距離も環境変数も潜在的な変数として扱う。

【Fig.2】SEMにおけるパス図:□ 計測値、○ 潜在的な変数
地理的距離と環境類似度は標準化して共分散を計算
 →RのLavaanパッケージのmaximum –likelihood estimation (MLE)で計算
各パラメータはシミュレーションで推定 →AICでベストモデルを探す

手法の検証
・GDM(Generalized Dissimilarity Modeling)とvariation partitioning analysisで検証。
この2種は潜在的な変数を用いることができないので、予測変数をPCAで先に選択する。

結果
構造方程式モデル
・【Tab.1, Fig.3】17種中15種でIBDが有意に貢献しており、13種でIBEが有意に貢献していた。
11種で、IBE+IBDのモデルが、どちらか一方のモデルよりもAICは適したスコアを示した。
平均してIBDが36.3%、IBEが17.9%の説明力をもっていた。
Cuba・Puerto Rico:IBD>IBE、 Hipaniola:IBD手法の検証
・全体的にGDMもvariation partitioning analysisもSEMの結果を支持。
【Tab.2】nDNAとmtDNAの比較。
A.porcatus:nDNAとmtDNAそれぞれ単独で行っても結果は類似。
他の2種:nDNAは単独で解析できるほどの変異が無く、mtDNA単独とmtDNA+nDNAを比較してもほとんど違いは無かった。

考察
構造方程式モデル
・SEMによってIBDはIBEの約2倍の影響力があることがわかった。
・Hispaniolan:5種中4種でIBE > IBD。IBEの貢献度が最も高い(5種平均22.6%)
←環境の不均一性:大
・他3島間:環境類似度に違いは無し。各島のサンプリングサイトごとの環境変数でも有意な違いは無い
→IBEの貢献度が低くなった。

手法の検証
・検証に2手法でSEMの結果を支持。nDNAを含んでも支持 → SEMの頑健性
posted by bigwest at 16:36| Comment(0) | 雑文(研究関係)